「日本再生歯科医学会」 設立のご挨拶

会長  吉山昌宏

1.学会設立に向けて
 生体機能の再生・再建分野は最近のバイオテクノロジーの発達によって研究成果の目覚ましい発展があり、臨床応用への社会的な期待が高まっています。歯科医学分野においても硬組織や軟組織の再生に関する研究成果が数多くの関連学会で報告されております。従来の人工材料による修復手法に加えて、別角度からまったく新しい修復法を確立できる可能性が期待されております。しかし、再生医学の研究領域は多岐にわたるため、多くの関連情報を一本化し、各関連分野の研究者が共通の目的で議論できる専門的な場が必要であると痛感しました。さらに、歯科では古くから高水準の補綴や保存の技術が独自に発達して来ました。新しい再生医学分野についても他科に先んじて歯科独自の技術を蓄積しようではありませんか。
 そこで、歯科医学分野における再生医療の進歩と発展によって人類の健康増進と福祉の向上に寄与することを目的として「日本再生歯科医学会」Japan Academy of Regenerative Dentistry (JARD) を新たに設立致しました。

2.歯科独自の再生医学研究を目指して
 歯周病領域、保存、補綴やインプラントの領域で個別に独自の再生医学関係の研究も数多く、それぞれの研究は歯科医学の発展に寄与すると同時に、再生医学の分野にも一石を投じる貴重な業績であります。しかし、残念なことに同じ歯科分野でありながら、これらの個別の縦割り領域でそれぞれ研究を発展させてきた結果、再生医学としての研究の基盤は同じであっても、それぞれの研究を組織再生という観点から共通の評価を得ることが困難であることに気付きました。「歯科独自の再生医学研究」の必要性から、いささか遅きに失した感もありますが、歯科領域では古代から人工の補綴材料による修復によってその機能が代替され、独自の学問体系が確立されています。しかし、人工材料による修復方法は本当に未来永劫にわたって続けてよいのでしょうか。もちろん、その蓄積された経験と知識は賞賛されるべきものでしょうが、人工材料神話の一角に組織再生の技術を発展させ食い込ませることを考えていくべきだと思います。従来の人工材料による修復手法に加えて、別角度からまったく新しい修復法を確立できる可能性が期待されております。さらに、以下の分野での発展を期待するものであります。

(1)歯科独自の再生医療テクニックの開発
(2)再生医療用材料,器械・器具の開発
(3)再生用in vitro口腔組織モデルの開発
(4)再生技術の歯科臨床への応用技術の開発
(5)口腔組織再生が全身に及ぼす影響の解明
(6)口腔組織の発生に及ぼす影響の解明
(7)口腔の神経系や血管の再生に及ぼす影響の解明
(8)口腔諸器官の再生に関する解明
(9)再生医療シミュレーションモデルの開発
(10)再生医療用統計処理体系の確立
(11)再生医療における個人差や加齢についての解明
(12)口腔内微生物と組織再生についての関係の解明
(13)喫煙など生活習慣が口腔組織再生に及ぼす影響の解明
(14)再生医療における臨床的評価方法の開発
(15)口腔組織再生医療に関する教育方法の検討
(16)組織再生における倫理的側面からの検討